山小屋は、ぼったくり?登山者が知っておきたい山事情
登山は、急な天候の変化に加え、高山病、脱水症状、低体温症、凍傷、道迷い、滑落、転倒など様々なリスクが予想される。そんな中、登山者が安全に登山を楽しむために無くてはならない存在の山小屋!
大切な山小屋も、時に飲食品が高すぎる!ボッタクリだ!と心無い声を聞くことも少なくない。当たり前のようにある山小屋が、どれだけ経営が大変なものなのか山小屋関係者に話を聞いてみた。
山小屋を作るには、膨大な時間と費用が掛かる
頂上にそびえ立つ山小屋。どうやって建てたんだろう?なんて思った人もいるのではないだろうか。
高度が高くなればなるほど、資材運搬が大変になり、それに比例し費用も高額になる。
山域の建設作業は、一般建築作業と違い、年中作業が出来るとも限らない。
雪深い山域では、夏季シーズンに基礎工事だけを切りよく済ませ、冬期は作業中止、翌夏季シーズンに再度作業を始め、数年計画で建築作業を進めていく。
また、作業員も毎回登って下りてを繰り返すわけにもいかず、長期拘束が必要になってくる。
車両搬入が出来なければ、ヘリでの運搬になり、これまた費用がかさむ。
考えただけで、お金の掛かりそうなことばかり!建築費用は、億単位のお金が掛かることはざらなのだ!
通常は、銀行などに事業計画を提出し借入。
この億単位の借入資金を返済していかなければならない。
当たり前のようにある山小屋は、絶え間ない努力の末、建てられていたのが分かる。
山小屋を建てた後も維持が大変
山小屋を作るだけでも大変なことなのだが、維持費も勿論掛かってくる。
固定資産税に保険。山域によっては組合費用や、借地であれば土地代など。
車両・ガソリン、プロパンガス、運搬代(歩荷・ヘリなど)、人件費・・・山小屋経営に必要な経費は、まだまだ出るだろう。
登山者が、当たり前のように購入する飲食品も、車両で運べるならまだしも、歩荷(呼称:ぼっか 山小屋に荷揚げをする人を指す)、ヘリ運搬となると経費が高額になってくる。山域によっては、登山道の整備も山小屋側で管理しなければいけなかったり、屎尿処理も自ら汲み取りし街に下す小屋もあり、何気なく捨てたゴミも小家主が分別した後にゴミ処理場に持っていくことなどもある。
雪深い場所になると、冬期シーズン(閉山時)に雪下ろし行う山小屋もあり、家族で一週間掛け雪下ろしを行うところもある。
どんな作業かというと、山小屋まで雪道5,6時間の道のりをワカンを履いて道を歩き固め、作った道をスノーモービルで登って行く過酷労働。
小屋まで辿り着いたとしても雪掻きが待っているし、小屋に辿り着く前に、雪が降ってしまえば・・・まさかの、やり直しなんてことも。
やり直しの状況を想像すると、涙が出そうになる話だ。
実際に、雪掻きの現場を見させて頂いたが、雪掻きも相当な労力なのは勿論。
小屋内にテン(イタチ科テン属に分類される動物)が入り込んだようで、食堂は荒らしに荒らされていて、糞尿も酷かった。
長期間小屋を閉めると湿気やカビで掃除も大変だったのを覚えている。
【写真1】発電機は壊れた時も踏まえ2台準備。絶賛発電中!
【写真2】雪を溶かし水作り!外から雪を何度も運んだ。
街の常識と山の常識は違う
街では、雨降っても飲食店にいけるし、体力なくなって店まで歩けなくなってしまったよ・・・なんてことは少ない。
山では、宿泊の予約が入ったかと思えば、天災によるキャンセルや、止むを得ず体調不良・体力不足で小屋に辿り着けない登山者もいたり、安定した集客状況が見えにくいのも特徴だ。
なんて質素な飯なんだ!ボッタクリだ!なんて思ってしまう人もいるだろう。
消費期限の短い食品は、集客状況が見込みにくい環境下では扱いにくいし、どうしても長期保存の利く、レトルトなどに偏りがちなのは致し方ないところ。
常に大きなリスクを背負いながら、登山者の安全で楽しい登山ライフの一役を担ってるのが山小屋だと感じた。改めて感謝したい。
実績のあるプロガイドが山の悩みに無料回答中。
安全に登山ができる仕組みを創り、より多くの人のライフスタイルの充実に貢献することを理念としています。是非、応援下さい。