登山に必要な筋力のトレーニング方法(大腿四頭筋)
登山者が抱える膝痛や腰痛の要因は、大腿四頭筋の筋力不足や使いすぎが考えられます。
大腿四頭筋の構造を見てみると、①中央にある大腿直筋、②外側の外側広筋、③内側の内側広筋、④深部にある中間広筋の4つに分かれています。そしてこの4つの筋肉が膝の骨(膝蓋骨)に付いており、膝を曲げ伸ばしする動きに関わっています。さらに大腿直筋は股関節にも付着しているため、脚の上下運動にも関わっているのです。これらのことから、大腿四頭筋に問題を抱えていると、膝や腰に影響を及ぼすのです。
実際に、登山の中では、急斜面や大きな段差を登る際、そして下りでの速度を調整するためにブレーキをかける際などに大腿四頭筋の活動量は大きくなります。「健脚レベル」といわれるコースを登る際の大腿四頭筋の活動量を、平地ウォーキング(早歩き程度)と比較してみると、登山の登りでは平地ウォーキングの約1.5〜2倍、下りでは約2倍も活動が増えます。
では、大腿四頭筋の負担を軽減させ、登山を快適に行えるようにするためにはどのようなことが必要なのでしょうか。そのためには①大腿四頭筋のトレーニングを行い、筋力をアップさせること、②大腿四頭筋に頼りすぎない歩き方をすること、が大切です。
①大腿四頭筋の筋力トレーニング方法
スクワット:両脚は肩幅程度に開き、両手は腰に添えます。直立の姿勢から、腰をゆっくり下ろします。腰、膝が90度になるくらいの中腰まで曲げれば、十分に効果があります。スクワットで使う筋は、登山の下りでも活動する筋です。しっかりトレーニングをしましょう(図1)
脚上げ:椅子の前方に浅く座り、腕はクロスさせて軽く肩に添えます。腹筋に力を入れながら、膝から下を上げます(図2)
②大腿四頭筋に頼りすぎない歩き方
登山の歩き方で大事なことが「体重移動」です。前に出した脚にしっかり体重が乗った状態で、後ろ脚を運ぶことで、大腿四頭筋だけではなく、ハムストリングス(太ももの後ろ側)の筋や臀筋(お尻の筋肉)も使えるようになります。小股でゆっくりと歩きながら、練習してみましょう(次回、登山の歩き方で詳細については記載します)。また、トレッキングポールを上手に利用すると、大腿四頭筋にかかる力を分散することができ、その結果、下りの際に膝にかかる衝撃も軽減させることができます(図3)
- 出典:安藤真由子、「登山体」をつくる秘密のメソッド.地球丸
- 山本正嘉、登山の運動生理学とトレーニング学.東京新聞出版局
健康運動指導士、低酸素シニアトレーナー、登山医学会代議員。
著書:「登山体」をつくる秘密のメソッド(地球丸発行)