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山岳ガイドへの相談

解決済み

冬季登山のアイゼンが刺さらない場合について

相談者 エンリケ さん

去年の1月1日に富士山の山頂で年明けを迎えようと思い、初めて冬季登山に挑戦しました。上の方に行くとアイゼンが刺さらず、また突風が激しく身の危険を感じ下山を選択しました。アイゼンが地面に刺さらない場合どのような対処が必要でしょうか?太陽が昇れば刺さると聞いたことがあるのですが、冬季において登りやすい時間帯はありますか?

確認ですが「冬季の富士山」が初めてだったのか、「冬季登山」が初めてだったのかどちらでしょう?

仮に「冬季登山」が初めてで富士山に挑んだとしたら一言でいうと「無謀」です。
なぜなら冬季の富士山は世界でも有数の厳しい気象条件を備えているからです。

相談者の経験された通り、アイスバーンでアイゼンの歯も立たず、ひとたび滑落すれば1000m以上の大滑落となり命はありません。
「冬富士」が「死の滑り台」と呼ばれる所以です。

恐ろしい突風も吹き荒れています。耐風姿勢をとっても吹き飛ばされてしまうこともあります。

身の危険を感じて下山されたのはたいへん賢明な判断であったと思います。
そのまま登り続けていたら、どれほど危険であったことでしょう。

例えていうならば、ボクシングを始めてスパーリングをしたこともない入門者が世界ランカーと真剣勝負するようなものです。
相手はあなたの実力とは関係なく、全力で叩きのめしに来ます。

まずは自分の技術が相手に通用するか少しずつ試しましょう。
雪のある低山から2000m級の雪山、北八ヶ岳、南八ヶ岳というように徐々にステップアップするとよいです。
自分の命がかかっていることですからしっかりと技術、経験を身に着け実力をつけて下さい。
「冬富士」に挑戦するのはそれからです。


それを分かっていただいた上で質問にお答えするとアイゼンはギンギンに研いでおく必要があります。金ヤスリで先をとがらせます。
歩くときは一歩一歩キックステップを行い、アイゼンの歯をしっかりと雪面に刺していきます。
夏と同じように足を置くだけではアイゼンは利きません。

また「登り安い時間帯」についてですが冬季は常に低温にさらされているので時間帯によって雪面に大きな変化を期待できません。
ですから「冬季の登りやすい時間帯」は特にないといって良いでしょう。

春(おおよそ5月~6月)でしたら午後の方が気温の上昇や日射によって雪は緩み難易度は下がります。
従って、より危険な下山は昼以降のほうが適しているといえるかもしれません。
当然、太陽が隠れているような日は午前、午後の差は小さくなりますのでご注意下さい。


冬季登山は一歩間違えば大事故につながりますので、より慎重な判断をして下さることを願います。

解決 相談者 エンリケ さん

厳しいお言葉ありがとうございます。冬期における登山が初めての経験でした。山を舐めていたこと、冬山へ望む姿勢が著しく足りなかったことを深く反省しています。これを機に理解を深め、基本から学び直し、実力をつけてからまた冬富士に挑戦したいと思います。ありがとうございました。

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