登山にファーストエイドの知識は必要
医療機関から遠く離れた山中で傷病者が発生した場合、それに対する応急処置などを行い適切な治療を受ける病院へ搬送するまでの補助的な応急手段がファーストエイド(以下FA)です。
応急処置には大きく分けて、生命の危険がある場合の救命処置と怪我や病気を悪化させないための処置の二つがあります。
あなたが今、目の前に傷病者がいたらどう行動しますか?
まず何が起こったのか、症状を把握し、重症なのか軽症なのか緊急を要するのかを「評価」し、
それによっては迅速に救助要請を出す必要があるかもしれません。
その評価を下すにはある程度の基礎的医学知識、FA知識、応急処置法を知っておかなければなりません。
現場でFAを的確に行えば傷病者の不安が解消されたり、その後の治療にも大きく影響することがあります。
ここであなたにとって最も大切なことは「パニック」にならないことです。
自分の持っているFAの知識を最大限に発揮し、救命.応急処置.搬送に努力することが重要です。
人を助けようとして万一うまくいかなかったとしたらその責任を問われはしないかというFA行為に疑問を持つかもしれません。
古くから伝わる「善きサマリア人の法」(急病になった人を救うために無償で善意の行動をとった場合、良識的にかつ誠実にその人ができることをしたならばたとえその結果について失敗しても責任を問われない)に基づいて日本においても民法や刑法で一次救命及び応急処置は医業行為ではないとされています。
登山する上で正しいファーストエイドの知識と最低限の技術は登山者として危急時対応手段としてぜひ知っておいていただきたい。
まずはFAに必要な基礎的な医学のことから勉強しましょう!
今回のポイント
- 「パニック」にならないこと。
- 一次救命及び応急処置は医業行為にではない。
- 登山をする上で正しいファーストエイドの知識と最低限の技術は知っておこう。
元文部科学省登山研修所専門調査委員
前日本山岳ガイド協会ファーストエイド委員長
NPO災害人道医療支援会常任理事
著書
「災害ドクター世界をいく」東京新聞
「感謝されない医者」山と溪谷社
「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」山と溪谷社