登山に必要な筋力のトレーニング方法(腹筋・背筋群)
登山を行うだけでなく、日常生活での姿勢保持にも重要な「体幹」と呼ばれる腹筋群と背筋群。そのトレーニング方法は様々なところで紹介されていますが、トレーニングしている部位とその動きを意識して行うことが大事です。
1)腹筋群
腹筋群は、①表面にある腹直筋、②その内側にある腹斜筋(外腹斜筋、内腹斜筋)、③さらに内側にある腹横筋から成ります。そしてそれぞれが違う役割をしています。表面にある腹直筋は体を前屈させる際に活動し、内側にある内腹斜筋と腹横筋は姿勢を維持する際や大きく呼吸を行う際に活動しています。そのため、トレーニングの方法も、それぞれに合った方法で行うことが大切になります。
例えば、一般的に「腹筋トレーニング」として代表される、床に仰向けになった状態から上体を起こしながら行う腹筋トレーニングは、主に腹直筋の上部を鍛える方法です。これだけを行っていても登山に必要な腹筋群の全てを鍛えられるわけではありません。長時間の登山を行う際の姿勢維持、そして深い呼吸が行えるようになるためには、腹斜筋や腹横筋のトレーニングを行いましょう。また、腹筋群はケアを行っていない人が多いこともあげられます。適切なトレーニングとケアが大切です。
① 腹筋群をほぐす(筋膜リリース)→図1
うつ伏せになった状態でボールなどを腹筋の下に入れ、ゆっくり体重をかける。10〜20秒ほど行い、ほぐれてきた感じがしたら部位を変えて行う。呼吸を止めないように気をつける。
② 腹筋群を伸ばす(ストレッチ)→図2
③ 腹筋群のトレーニング方法→図3
2)背筋群
背筋群は、①首を上部として菱形に形成される僧帽筋、②背中中部に広く形成される広背筋、③背中中央に上下に伸びる脊柱起立筋から成ります。それぞれが異なる働きをしており、僧帽筋は肩を上げる際や肩甲骨を寄せる際に活動する筋、広背筋は腕を下ろした状態で肩甲骨を寄せる際に活動する筋、脊柱起立筋は内部にある筋肉で、姿勢維持に貢献しています。背筋群は、立ち仕事をしている状態や、デスクワークなどで上半身を動かさない状態でいる際は緊張しており、日常生活においても働いていることが多い筋群です。どちらかというと、トレーニングよりもほぐすことと伸ばすことを重要視したほうがいい可能性があります。
背筋群のケアを怠ると、腰痛や肩こり、めまいなどの原因にもつながります。しっかりケアができると、肩甲骨の動きもよくなります。そして、肩甲骨の動きがよくなると血流が改善するだけではなく、下りでバランスが取れるようになり、転倒や滑落の防止にもつながります。背筋群はまずはしっかりケアを行いましょう。
④ 背筋群をほぐす(筋膜リリース)→図4 僧帽筋
うつ伏せになった状態でボールなどを背筋の下に入れ、ゆっくり体重をかける。10〜20秒ほど行い、ほぐれてきた感じがしたら部位を変えて行う。呼吸を止めないように気をつける。
⑤ 背筋群を伸ばす(ストレッチ)→図5 広背筋
大きく呼吸を行いながら、四つんばいになった状態で背中を丸める。
⑥ 背筋群のトレーニング方法→図6 脊柱起立筋
うつ伏せになった状態から、片方の手と、手と逆側の脚を上げます。勢いをつけるのではなく、ゆっくりと上下しましょう。手先や足先を意識するのではなく、体の中心で持ち上げるようなイメージで。目線は下の手を見る感じで行いましょう。
健康運動指導士、低酸素シニアトレーナー、登山医学会代議員。
著書:「登山体」をつくる秘密のメソッド(地球丸発行)