登山に必要な筋力と持久力と登山の効果
一般的にウォーキングといえば、平地を空身で30〜60分歩くことが多いですが、
登山はウォーキングと違い、坂道、不整地、荷物を背負う、そして長時間に渡って体を動かし続けます。
登山を続ける際に、「下りで脚がガクガクする」「膝の痛み」「筋肉痛」などという不安を感じたことがある人もとても多いことが報告されています。
登山では全身の筋力を使いますが、特に体幹と下腿の筋力はとても重要だと言われています。
例えば、平地でのウォーキングに比べて登山の登りでは、大臀筋(お尻)の筋力は約1.5〜2倍の活動量になります。
また、登山の下りでは、平地のウォーキングよりも、腹直筋(お腹)や大腿四頭筋(太ももの前面)の筋力は約1.5〜2倍の活動量になります。
このように、登山では平地ウォーキングよりも何倍もの筋活動になるため、筋力不足のまま登山を続けていると脚がガクガクしたり、膝痛や筋肉痛が起こったりするのです。
また、登山では、持久力も平地ウォーキングよりも必要です。
体の負担度を表す指標に心拍数(脈拍数)がありますが、登山の場合は平地ウォーキングよりも心拍数が高くなります。そして心拍数が高い状態で、長時間の運動を行なわなくてはならないからです。
このように登山は筋力・持久力ともに、平地でのウォーキングよりも必要となるため、体にとって負担が大きくなるとも思いがちですが、言い換えると、快適に登山を行えるようになることは、より健康になるための近道なのです!!
登山の効果を図で表すと下の図のようになります。
効果的に筋力を鍛える3つの方法
効果的に筋力を鍛えるためには、以下の3つを行うことが重要です。
しかし、全ての部位に対して、同じタイミング(同じ日や同じ時間)に3つを行うことは大変なことでもあります。疲労した部位、弱い部位などそれぞれ個人差があると思いますので、必要な部位から行いましょう。
1. ほぐす(筋膜リリース)
筋肉は筋膜という薄い膜で覆われています。
筋膜は、運動を行った際はもちろんですが、長時間座った状態や偏った姿勢で作業を行った際など、あらゆる場面において固まってしまい、筋肉自体の動きが悪くなります。
この状態を放置してしまうと、いくら筋肉を伸ばしても、トレーニングしても、その効果は低くなってしまいます。
まずは、筋膜をほぐしてからストレッチやトレーニングを行いましょう。筋膜は圧をかけると自然にほぐれる性質を持っています。
2. のばす(ストレッチ)
筋肉をゆっくり伸ばして、柔軟性を高め、可動域を広げる方法です。
可動域が広くなることで、大きな動きができるようになったり、血流が促進されたりします。また、怪我の防止にもつながります。
その場で行う静的ストレッチや動きの中で行う動的ストレッチなどがあります。
3. 鍛える(トレーニング)
体力は普段から意識して刺激を加えていないと、低下してしまいます。
現在の体力を維持・増進させるためには鍛える=トレーニングすることが大切です。
筋肉を強くするための方法としては、筋肉自体を大きくする方法や活動する筋繊維を増やす方法があります。
また、登山は長時間の運動なので、心肺機能もトレーニングすることが必要です。しかしがむしゃらに行うと効果が少なかったり、怪我の原因になったりします。
必要な部分を効果的にトレーニングすることが大事です。
ここでは、快適に登山を行うため、日頃からできる筋力や持久力のトレーニング方法、登山中に心がけること、登山翌日に疲労を残さない方法など、簡単に取り組める体つくりの方法についてお伝えします。
健康運動指導士、低酸素シニアトレーナー、登山医学会代議員。
著書:「登山体」をつくる秘密のメソッド(地球丸発行)