登山者の悩みの一つに「登りで息がきれる」ということがあります。
登りでは自分の体重と荷物重量を持ち上げる動作が必要となってくるため、筋力だけでなく、心肺機能にも負担かかかります。
そのため、持久力不足だったり、オーバーペースだったりすると、息が上がります。持久力も個人差があるために、同じ速度で歩いて(走って)いても、持久力が弱い人は強い人よりも相対的に運動強度が高くなるからです。(図1)
登りで息が切れないようにするためには、「息が切れないマイペース」で登ることが重要ですが、持久力トレーニングも行っておくことが大事です。
持久力トレーニングというと、ウォーキングを想像する人もいるかもしれませんが、表1を見るとわかるように、登山の運動強度(エネルギー消費量)はウォーキングよりも約3倍以上あるため、登山のためのトレーニングとしては、平地ウォーキングでは強度が足りません。
しかし、日常生活に持久力をアップさせるための「長時間の運動」を取り入れることは容易なことではありません。仕事や家事などで多忙な場合、時間を確保することが難しいからです。
トレーニングを行う上で、①強度(トレーニングをどのくらいの強さで行うか)、②時間(1回に何分間行うか)、③頻度(1週間に何回行うか)を考えることが重要です。
その要素を上手く組み合わせると、持久力トレーニングも効率よく行うことができるようになります。
例えば、長い時間が取れる場合には強度を落としたトレーニング、短い時間しかない場合は強度を高くしたトレーニング、といったように、日常生活や体調、気候に合わせて上手くトレーニングを行いましょう。
図2はトレーニング例です。また、通常のウォーキングであっても、荷物を背負って行うと、良いトレーニングになります。
トレーニングを行う際に、心拍数(1分間に心臓が血液を送り出す回数)を指標とすると、より効果的なトレーニングが可能です。
持久力向上のためには、最大心拍数の60〜80%の強度でトレーニングを行うと良いでしょう。
心拍数は個人差が大きいので、個々で目標を立てましょう。目標心拍数は図3で求めることができます。
運動不足の方は60%くらいから行い、普段から運動を行なっている方は80%を目標に行いましょう。
心拍数の計測方法は触診で測定する場合は、歩きながら、もしくは少し立ち止まって行い、6秒間の値を測定し、10倍するとわかりやすいです。
◯参考文献
1)山本正嘉「登山の運動生理学とトレーニング学(東京新聞出版局、2017)」
2)安藤真由子「登山体をつくる秘密のメソッド(地球丸、2015)」

健康運動指導士、低酸素シニアトレーナー、登山医学会代議員。
著書:「登山体」をつくる秘密のメソッド(地球丸発行)