ファーストエイドキットは何を持っていくべきか迷う方は少なくない。
様々なアクシデントを想定する能力をつけ、適切なファーストエイドキットの作り方を学びましょう。
ファーストエイドキットを使う場面とは?
登山は自己責任、自己管理の行動であると言われる。
しかし、地形、天候、体調が大きく左右する自然の中での行動中に思わぬアクシデントに見舞われることは想定しておかなければならない。
そのアクシデントとは自分自身であったり、仲間であったり、偶然 居合わせた他人であったりする。
登山中のアクシデントとは何を想定したものなのか?
転倒をして怪我、出血、打撲、骨折などの外傷を負った場合に応急処置には必ず医療用品が必要である。
ファーストエイドキットは自分で作ろう
市販されているファーストエイドキットには、ガーゼ、絆創膏、包帯などが組み込まれている。
しかし登山中の傷病は自分自身で想定し、自分自身でその対処を考えて準備するのが大切であり、自分が使いなれた物、必要と思った物を買い揃えるべきである。
重量、容量を考えればコンパクトに収めたい。
マチ付のフリーザーバックなどに入れ濡れないようにすることも大切である。
私が推薦するキットの一部
1)小型ハサミ:衣服を切って傷全体を見る時、三角布を切って包帯を作る時に使用。
2)ビニール手袋:蘇生時、汚染創の処置、止血の時に使用、 自分の感染予防になる。無い場合はビニール袋などで代用する。
3)三角布:これは必携で、包帯にも副木の固定の帯としても使える。
4)テービングテープ:膝や足関節の固定、傷の閉鎖、肋骨骨折などに使える。テーピングテープは粘着面に紙ついている物が切りやすく便利。
5)タオル:普通の汗拭きタオルの他に綺麗なタオルをもう1 枚。圧迫止血などの時に用いる。
6)ガーゼ:滅菌したガーゼがあればいいが、バンドエイドなど大きさの違う絆創膏付のガーゼを持つ。
7)ペットボトルの蓋:穴あきのペットボトルの蓋(メーカーに 注意)。傷の洗浄の時に使う。
8)人工呼吸用マウスシート:マウスtoマウスをする時に使用するもので通販で購入できる。
(写真1 私の推薦するもの)
(写真2 私が使用しているキット)
(写真3 アメリカの野外活動者が用いるキット)
9)その他:毒蛇の毒を吸い出すポイズンリムバー、 固定用に安全ピン、毛抜きなどもあれば便利。
*ファーストエイドキットは例え1000mの山だろうが3000mだろうが登山する場合は持参するべきである。
これという定型的なものはないので自分で工夫する。
消毒薬など液体のもの十分に密閉する必要がある。 パックになって中に空気が入っているものは高所で膨張するので注意を要する。
収納はわかりやすく分類しておく。
薬は何を持つべきか?
薬は市販の自分がいつも使っている慣れたものを持参するべきである。
消炎鎮痛剤(痛み止め)、胃腸薬、総合感冒薬、下痢止め、抗 ヒスタミン薬(アレルギーに使用)、消毒薬etc。
持病のある方は降圧剤などを持参するべきである。
今回のポイント
1.ファーストエイドキットは自分で作れ
2.普段から想定した傷病に使う物を考えて
3.薬は自分のなれたものを
元文部科学省登山研修所専門調査委員
前日本山岳ガイド協会ファーストエイド委員長
NPO災害人道医療支援会常任理事
著書
「災害ドクター世界をいく」東京新聞
「感謝されない医者」山と溪谷社
「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」山と溪谷社