ファーストエイドには順序があります
FAで最も優先されるのはその症状が『生命』に関わることなのかどうかです。
次に『機能』に関わるかどうか、そして『美容』に関わるかの順序でみていきます。『生命』→『機能』→『美容』
『生命』とは頭を打ったなどで意識状態が悪い、大出血で脈が触れない、雪崩で気道(口、鼻から肺までの間)に雪がつまり呼吸ができないなど生命に直結する場合を言います。
『機能』とは骨折や傷をそのままにしておくと後に手足の機能障害を起こすかもしれない場合を言います。
『美容』とは顔の傷など形状に障害を残すかどうかで優先順位は三番目ということになります。
周囲状況の確認
傷病者に遭遇した場所があなたや傷病者にとって安全かどうか問われますが、山で怪我をする場所は大体が岩場や雪渓、雨に濡れた山道だったり決して安全性の確保ができない場所が多いのが現実です。
従って救助者のあなたは困難な状況でFAを実施しなければならないことを考慮しておかなければなりません。
また傷病者の数とそれに対する救助者の数も把握することも大切です。
救助者の人数が足りない場合は応援を頼む必要があります。
傷病者の数が多い場合はその重症度、緊急度からどの人から応急処置をするかの優先順位を決めなければなりません。(応急処置の順序付けすることをトリアージと言います)
傷病の原因がなんであるかによって応急処置法が変わってきますのでそれも把握しておく必要もあります。
例えば転落などによる脊椎の損傷を疑われ場合の処置、低体温症を疑われる場合などによってその対処が変わります。
初期評価
生命に直結する気道、呼吸、循環、意識の状態を短時間に評価することが重要であり、
いわゆる「バイタルサイン」(体温、脈拍、血圧、呼吸など)が悪ければ生命の危機に直面していると判断することになります。
FAの順序で直ちに最優先して行わなければならないのは『気道確保』(口の異物などを取り除いたり、顎を上げたり呼吸しやすいようにする)と『止血』(出血量が多い所の)です。
ここまでの評価はできるだけ迅速にやらなければなりません。
また転落や滑落事故のようにスピードのついた外傷は「高エネルギー外傷」と言われ、頚椎を損傷していることがあるので頚椎のニュートラル位に保持し、固定することが大切です。(図参照)
野外のファーストエイドの流れ
状況の安全性(自分 Self. 現場 Scene. 傷病者 Survivor.)→ 初期評価 → 重症度、緊急度の評価 → 全身観察 → 応急処置 → 搬送手段の決定になります。
初期評価:頚椎保護(頸髄損傷を避けるため)Cervical spine → 気道の評価Air way → 呼吸の評価Breathing → 循環(心臓の動き)の評価 Circulation →意識レベルの評価 Disability の順になります。
3S(状況判断し)→初期評価(C→A→B→C→D 生命の危機を評価し)→全身観察する、一般に3S-C.A.B.C.Dと表現されますが、この流れを頭の中にしっかりと入れておきましょう。
今回のポイント
- 最も優先されるのは、その症状が『生命』に関わることなのかどうか
- FAの最優先は『気道確保』と『止血』
- FAの順序を知ることが大事
剣岳.別山尾根.平蔵のコルの手前の痩せ尾根で心肺蘇生をした救助経験(要請を受け)があります。
夜7時過ぎ、土砂降りの雨、身の危険を感じながらのファーストエイドでした。
残念な結果になりましたが最悪の状況で最善を尽くしたと思っています….
山でのファーストエイドの難しい体験でした。
元文部科学省登山研修所専門調査委員
前日本山岳ガイド協会ファーストエイド委員長
NPO災害人道医療支援会常任理事
著書
「災害ドクター世界をいく」東京新聞
「感謝されない医者」山と溪谷社
「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」山と溪谷社