山岳ガイドへの相談
山岳事故で道迷いが多いとニュースで見たことがあり、
登山で道迷いしないよう地図読みを勉強するようになりました。
GPSアプリと登山地図の違いを教えていただけないでしょうか?
GPSアプリでは登山地図に比べて登山地図の◯◯な部分がわかりにくい など。
私自身、GPSアプリと登山地図の読図と両方を身につけようとしています。
より知見を広げるため教えていただけると有難いです。
日本独自の測位衛星“みちびき2号”の打ち上げも直前に迫り、GPS関連に関心を持たれる方も増えているように思います。
ご質問への解答の前に、そもそもGPSとは?登山地図とは?という話から説明していきたいと思います。
まずGPSですが、人工衛星を使った測位(位置、場所を特定すること)システムの1つで、アメリカが構築し、運用しているものです。
一般的には測位衛星システム=GPSと思われがちですが、GPSはあくまで測位衛星システムの一種ということになります。
同様のシステムとして、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、中国の北斗などがあります。
このようにシステムがその運用する国(や地域)に属しているため、その運用主体の都合により、民間の利用が制限される可能性を捨てきれません。実際に、2000年5月まで民間のGPS受信機は意図的に精度を落とされていました。
次に登山地図についてです。
登山用の地図としては、紙に印刷された、登山に役立つ情報が記載されているものが民間の出版社から発売されていますが、「読図」という意味では国土地理院の地形図が役立ちます。
地形図に描かれている等高線から実際の山の地形をイメージすることが、読図の核心です。
その意味では、GPSアプリに地形図を表示している場合でも、読図の能力は必要です。
以上を踏まえ、それぞれの特長をまとめます。
GPSアプリの特長(主に紙地図との比較で)
・現在地を表示してくれる
・歩いた軌跡を記録してくれる
・地図の拡大縮小ができる
・政治的な都合で機能に制限がかかる場合も
・端末の故障やバッテリー切れの心配がある
※拡大縮小については便利な半面、距離感を把握しにくいという弊害もあります。
紙地図の特長はそのまま上記の裏返しになりますが、ひとつ付け加えると
・総覧性が高い
といった点が挙げられます。
タブレット端末などの軽量で大画面な端末も増えてきてはいますが、紙地図を広げた大きさには到底敵いません。
総覧性が高い事で、広範囲を俯瞰的に把握する事が可能になりますが、これは意外と意識されない紙地図の重要な優位点ではないでしょうか。
また地図は登山中だけでなく、計画段階や下山後の振り返りでも使います。
その点、気軽に書き込める紙地図はやはり便利です。
GPSアプリも紙地図も、それぞれのツールに長所短所があります。その事をよく理解した上で、1つのツールに依存したり固執したりしすぎずに、柔軟に活用出来ることが大切ではないでしょうか。
高橋ガイド様
GPSアプリと登山地図のメリットデメリットだけでなく、
懇切丁寧に説明下さったこと感謝してます。わからないことだらけでしたが、お陰で勉強することができました。
両者の長所短所を理解した上で柔軟に活用していきたいと思います。
ありがとうございました。