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山岳ガイドへの相談

解決済み

悪天候時の登山実施の判断の仕方

相談者 ごまちゃん さん 45歳/男性

登山初心者のため、雨予報や曇りのち雨 と少しでも雨が降る可能性があると思えば行かないようにしています。

悪天候時(当日、事前)に、登山可否を決める判断基準などはありますか?
参考にさせていただきたいです。

天候判断は登山に関わる判断の中で、最も重要なものの1つです。

何ミリ以上の雨が降ったら中止といったような明快な基準はありませんが、
敢えて一言で表すならば、
・その山行期間中の気象条件で、
・目的とするルートに対して、
・自分(またはパーティ全体)の体力・技術・装備で対応できるかどうか?
が判断基準になります。

以下に天候判断の手順を解説しますので、参考にしてみてください。


1.情報を集める
・山の天気専門サイトなどで、山頂の天気(できれば気温、風速、風向も)を確認する

・山頂の天気が分からない場合は、麓の町の天気を参考に、一般的に標高100m毎に気温は0.6度下がるという計算式(※)を使って、山頂の気温を予測する

・当該地域に出ている注意報や警報を確認する(雷など)


2.集めた情報を検討する
・1で集めた山頂の気温に加え、一般的に風速1m/s毎に体感温度は1度下がるという計算式(※)を参考に、その山行中で一番厳しい気象条件を想定し、登山ルートの条件(森林限界を越えるか否か、岩場の有無、山小屋の有無、行動時間の長短など)も考慮し、自分(またはパーティ全体)の体力、技術、装備で切り抜けられるか検討する

・雷予報がある場合、ルート上に山小屋等落雷から避難できる場所があるか、雷が発生しそうな時間までに行動を終えられるか等、被雷のリスクを検討する


検討の結果、自分(またはパーティ全体)の実力で対応可能、リスクは許容範囲内となれば、計画実行となります。


判断の精度を上げるためには自身の山行経験を蓄積する事や、先人の山行記録や気象遭難の記録を学習する事も有効です。

そして山行経験の蓄積という意味では、悪天候に対して慎重になりすぎるのも考えもので、時には(安全へのマージンを十分取った上で)敢えて悪天候の中での登山を経験することも必要です。

例えば「風速15m/s」という数字を頭で理解するだけでなく、森林限界を越えた稜線で真っ直ぐ立っていられないような強い風と雨に晒されて近くに山小屋も無い、というような状況に実際に身を置いた経験がある事、そしてその状況下で自分の精神状態にどんな影響(焦り、不安を感じ、結果として凡ミスをしたり)が出るのかを知っておく事はとても大切です。

気象遭難の記録としては、例えば2009年に起きた北海道・トムラウシ山での遭難事故の調査報告書が日本山岳ガイド協会のホームページに掲載されています(以下からPDFをダウンロード可。書籍もあります)。
http://www.jfmga.com/tomuraushi.html
他にも気象遭難の事例をまとめた書籍や、山の雑誌に掲載されている遭難の報告記事なども参考になるでしょう。


季節によって、また山行が日帰りか宿泊かによっても注意すべきポイントは変わってきます。
また天気予報を参考にするだけでなく、天気図や観天望気など、知っておくと役立つ情報は他にもありますので、詳しくは山岳気象の専門書なども参考にしてみてください。


最後に、日本で山登りをしていく上で雨は避けられません。また壮大な渓谷美や豊かな植生も、この湿潤な気候があればこそです。
悪天候と上手に折り合いをつけて、是非とも安全かつ充実した登山を続けていって下さい!


※標高による温度変化および体感温度の計算式は実際はもっと複雑ですが、ここではおおよその雰囲気を掴むために話を単純化しています。実際はもっと厳しい数値になる場合もあります。

解決 相談者 ごまちゃん さん 45歳/男性

ご丁寧にありがとうございました。
今まで、天気予報で晴れてるからいこう程度で、細かな状況把握ができてなかったので痛い目を見たこともありました。
情報を集め、悪状況をもっとイメージできる想像力を養いたいと思います。

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