山岳ガイドへの相談
昨年から本格登山をはじめ、今までに奥穂高、槍ヶ岳、赤岳、鹿島槍ヶ岳等をはじめ夏山を中心に登山を楽しんでいます。 ハーフマラソンを2時間で走ったりしながら登山筋力はそこそこつけているつもりでした。
ところが昨日至仏山を下山中に何気ないところで急に左太もも前方内側部分がピクピクして痛みが強くなり何分かのことですが動くことができなくなりました。
おそらく、痙攣かと思います。
年齢は50才ですが体力にはそこそこ自信があったので少しショックを感じています。
医学的な話になってしまうかもしれませんが、日常のトレーニングならびに登山中対処方法についてアドバイス
いただけたら幸いです。
これが岩稜縦走中でなくてよかったと思ってます
筋肉の痙攣は登山中にしばしばみられるトラブルです。
医療講習でこの関連のお話をすると、非常に高い確率で経験者が手を挙げられます。かくいう僕も経験済です。
下肢の筋肉の痙攣(こむら返りを含む)の、最も多いものは①特に原因となる病態がなく生じるもの(良性特発性といい、夜間の睡眠中に起こることもあります)②運動に伴って生じるもの(運動中や運動後に生じます)、の二つです。
原因としては脱水、電解質異常(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)、薬剤の影響などがあるとされています。また、様々な対策を行っても繰り返し起こる場合には、神経や代謝の関連した病気が背景に存在することもあります。
予防策としては、事前の体力作り(筋力の不足しているところに過度な負担がかかると、痙攣が起こりやすくなります)や、十分な水分と電解質の補充が挙げられます。
起こってしまったときは、まずその筋肉を休める、ストレッチを行う、その間に水分や電解質を補充する、のが良いと考えます。
仰る通り、その場で安全に休めない岩稜帯でこのようなことが起こると、とても危険です。通過前に一息入れて、水分や電解質を補充したり、筋肉の疲労を確認しながらのばしたり、といったことを行っておくと、危険個所をより安全に通過できるのではないでしょうか。
余談ですが、筋肉の痙攣の話が出ると、必ず某漢方薬の名前を口にする方がおられます。
芍薬甘草湯、またの名を漢方68番、その他いろいろな商品名で販売されている薬剤です。
筋肉の痙攣に対し、即効性に効果がある薬剤ですが、根本的な治療となるものではありません。また服用法などに関しても、誤解されている方が少なからずおられますのでご注意ください。
間質性肺炎、電解質異常に伴う不整脈など、時として命に関わる副作用/合併症を来たしうる薬剤です。説明をよく読んで、正しい理解のもとでご使用ください。
さっそくの大変丁重な回答をいただきありがとうございました。自分の体力を過信せずにこれからも安全な登山を楽しみたいと考えています。
ありがとうございました。