山岳ガイドへの相談
山の歩き方のフラットフィッティングについて質問です。よくフラットフィッティングの方が靴底全面を使うので滑りにくいという説明がされているとおもいます。実際、少しウェブで検索すると、ガイドさんによるそのような趣旨の説明ページがいくらか見つかります。
一方で、大まかにいうと摩擦力は面積には関係ないという理解をしています。例えばボルダリングではベタっと足をおくより爪先を上手に使うことを体験レッスンくらいの初期に指導されると思います。
たくさん歩いて感覚的に正しい歩き方を身に付ければよいのでしょうが、フラットフィッティングの理論的背景がよくわからなくなったので、質問しました。
なぜ登山ではフラットフィッティングが有効とされるのでしょうか。
●摩擦の話
フラットフッティングとはその名の通り、足裏全体をフラットに地面につけて歩く方法です。足の裏全体をベタッと接地させながら歩くことで、靴裏のグリップ力を最大限に生かし歩きます。「摩擦力は面積には関係ないという理解」との事ですが、登山靴のソールは凸凹、クライミングシューズはフラットというのが基本的なソールです。理由は「静正摩擦係数×面積×加重=フリクション」という法則があるから。「静正摩擦係数」とは、クライミングでいえば「滑りにくいソール」のこと。「フリクションが高い」とは、足が滑りにくいこと。 ソールがフットホールドと広い「面積」で接するとフリクションは高くなる。この広い面積を出すためには、フラットなソールが有利なのです。登山靴は、岩と違い泥や砂利など着地点自体が動くため、それに対してスパイクのような食い込める、凹凸パターンのソールが使われています。と、そもそも登山者自身がその接地面に対しすべりにくような足の置き方を意識がなければフラットなクライミングシューズであってもフリクションが得られません。
●バランスのお話
と、スポーツを行う際に足裏のどこでバランスをとっているでしょうか?私は母指球周辺でバランスを取っています。
フラットフッティングを意識せず整地されたアスファルト歩きのように、足を上げずに、爪先側が下がった蹴り出した状態から足を運びかかと側から足を地面に接する。つま先をどこかに引っ掛けつまづく可能性がありますし、この歩きでは接する面が動く不整地では足を置いた際には前方に岩が動き、足を前に運ぶ際には後方に岩を動かします。それにより自分自身もバランスを崩す事もあるかもしれません。さらに足を置いた際にそこが滑りやすい場所であった際にどうでしょうか?かかとでバランスを取る、もしくは瞬時にリカバリーというのは難しいですよね。私は母指球側でバランスを取りたいです。
フラットフッティングはスムーズな重心移動を行う為、不安定な不整地でバランスを取りやすい足の置き方と言えるのではないでしょうか。
ご丁寧にありがとうございます。大変参考になります。
バランスのお話、まさにおっしゃる通りですね。私もときどき足をとられたりするので、気を付けようと思います。
摩擦の話ですが、静正摩擦係数×面積×加重=フリクション」という法則、これは正しいですか?
高校生の理科でも、F=μNとかF=μmgとかの式を習いますが、それと不整合な気がします。
この点については何を論点としたいかというと、摩擦力は力さえかかれば面積は関係ないはずなので
岩場等ではベタっと足を置くのではなくて、母子球あたりで爪先立ちするような動きもただしいムーブと理解しているのですが、そのような理解でいいのでしょうか?
摩擦力の発生原因に関しては近年になって新たな理論が出てきたり、今後も法則や理論が覆される可能性があると思います。靴のソールはゴムですが、弾性体の摩擦力は荷重に比例しない。それどころか摩擦係数が変動する、単位面積あたりの荷重が7倍になると摩擦係数は半減するなどの報告もあります。
この摩擦力に関して、一般的な登山での回答をさせていただいたつもりですが、私は科学者ではありませんのでこれ以上の回答は控えさせていただきます。
仮に「摩擦力は力さえかかれば面積は関係ない」としてもそこが滑りやすい苔むした場所ではどうでしょうか。長時間行う登山で長い時間、回数を筋力や身体に負荷のかかるつま先立ちするのは可能でしょうか。クライミングにおいてもスメアリングする際には角の場所ではフラットなソール部分を使いますよね。
山は平面ではなく、立体的な地形であり、濡れていたり乾いていたり自然環境の中では同じ状況はありません。
登山において重要なのはなるべく滑らないように、なるべく負荷のかからないよう足を置く場所の形状に合わせる事。エッジング、スメアリングも足場の良い場所とそうでない場所をつなぐ技術の使い分け。それにはご自身のポジションが大切。これが私からのフラットフッティングに関して回答になります。