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山岳ガイドへの相談

解決済み

歩き方のコツはありますか?

相談者 上田 さん

登山の歩き方を勉強しています。
登山中、年配の方や歩荷の方が腕組みをしながら登山をされてるのを見たことがありますが、
歩行技術の一つなのでしょうか?

疲労が溜まりにくい歩き方、安全登山のために必要であれば真似ていきたいです。

腕組みにはいくつかのメリットがあります。

1 肩の筋肉にかかる負荷を軽減できる
特に重量があるザックを背負っている際に、ザックのショルダーベルトによって肩の筋肉(僧帽筋上部)が圧迫されて血流が悪くなり、肩が痛くなることがあります。
このような状況に対して、腕組みをすることで僧帽筋に力が入り、圧迫によるうっ血を防ぐことが出来ます。
個人的にも重装備を背負った時は、腕組みの効果を強く感じています。
歩荷さんが腕組みする理由はここにあります。

2 腕や指先の浮腫みを軽減できる
登山時に手が浮腫みやすい方は、手を心臓と同じ高さにすることで血流を良くし、浮腫みを軽減できると聞いたことがあります。
ただ、私自身はあまり手が浮腫むことがないので、これに関しては効果を感じたことはありません。

3 重心を軸足の上に集中させやすくする
疲れにくい歩き方を講習会で説明する時には必ずお話しているのですが、登山は「バランス」の求められる運動です。
特に、段差が大きくなったり、険しい道になればなるほど、片足になった時にバランスを崩さないだけでなく、『如何に軸足の上に重心を集められているか?』が省エネ歩行の最重要ポイントになります。

腕組み以外にも、腕を腰にあてる、ショルダーストラップを掴むなど、他に方法がありますが、どれも腕を振らないことで重心を体幹部に集めることが出来ます。
さらに、軸足に重心を集中させるためには、右足を出す時は右足の上に右膝、右腰、右肩が集まる歩き方が理想的です。
(これが「ナンバ歩き」や「二軸歩行」と言われています)
しかし、右足と右手を同時に出す歩き方は難しいので、腕を組んで手の動きを封じることで、足・腰・肩を連動させる歩き方がしやすくなるのです。

4 重心を進行方向に集めて推進力に出来る
マラソンでは進行方向(爪先側)に体をやや斜めに倒して、体が前に倒れていこうとする力を利用して推進力にします。
登山でも急登になると皆さん自然と前傾姿勢になっていると思います。
前進するためには、正確には「軸足の真上」ではなく、やや前方に重心があるとスムーズです。
ですから、手を腰に当てるよりは、胸の前で組んだ方が重心をやや進行方向に集められるメリットがあります。

重心を前方に持っていくために首を倒して(顔を下に向けて)歩いている方もいますが、視線が足元だけに集中しがちです。
個人的には腕組みをした分だけ、その分顔を上げて歩くことが出来るのもメリットだと思っています。


3、4の歩き方については、文章で読んだだけでは理解して習得するのは少し難しいかもしれません。
上半身の使い方としては上述の通りですが、実際には腰や足の使い方も複雑に関わってくるので、実際に運動理論が分かって指導している人に学ぶ機会があるといいと思います。


●腕組みのデメリット・注意点

当然ですが転倒したら危険がある岩場やガレ場、下山時など、転んだりバランスを崩した際にすぐに手を付けず危険です。
また、腕組みをすることで姿勢が猫背になってしまうと、肺が広がらずに呼吸がしにくくなります。
背中はまっすぐの姿勢をキープ、組んだ腕がおへそより下に位置するようだと姿勢が崩れ過ぎです。


腕組みは歩行技術の一つですが、もともと体の作りや歩き癖に個人差がありますので、効果には差があると思います。
それを念頭に、実際に試してみて頂くといいと思います。

解決 相談者 上田 さん

野中ガイド様

私のような登山初心者にも分かりやすく噛み砕いて下さりありがとうございます。
意味あっての腕組みだったのですね!危険な岩場やガレ場などは避けて、腕組みを試してみようと思います。
背中はまっすぐの姿勢をキープで!

有益なアドバイス感謝です。

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