山岳ガイドへの相談
いつも参考にさせて頂いております。
高山病についてお伺いします。
高所に弱く、歩いている時に症状が無くても、寝ている間に頭痛が酷くなります。
歩き出すと、深い呼吸を意識出来るので、症状は治ります。
高所ではアルコール、眠剤は飲んでおりません。ダイアモックスは服用します。
今年の夏の富士山も、寝ていて頭痛が酷くなり、3,100mの小屋から、また来ればいいや、と思い下山しました。
5合目で1時間程、滞在しましたが、6時間かけて3,100mまで登りました。
5年前に行ったキリマンジャロも最後の小屋でうとうとしたら頭痛が酷くなり、歩き出したものの5,000m付近で敗退しました。
でも、昨年は5,200mのチベット側、エベレストBC迄、青藏鉄道、バスでの移動、途中、拉薩以降、数日、夜間の頭痛に苦しみましたが、4,000m越えた辺りからすっかり元気になり無事に行けました。
来月、キナバル山へ行く予定です。低酸素トレーニングは受けて行きますが、寝ている間の高山病の症状を軽減する対策があれば、是非教えて下さい。
高山病の症状は夜間にひどくなる場合が多いと言われます。
実際に、起きている間は問題なくても、寝ている間や起床時に高山病を発症してしまうということもよく耳にします。
高山病を発症する要因として「①個々の体質」と「②登山の行程」が考えられます。
①個々の体質
例えば、いびきをかく方、無呼吸症候群の方、生活のリズムが不規則な方などは高所での睡眠中の酸欠度合いがひどくなると言われますが、それに当てはまらない方でも高所での睡眠が苦手な方は多いです。
睡眠中の高山病防止策は「目的地に到達してすぐに寝ない」「横向きに寝る」「目がさめるたびに水分補給を行う・意識的に呼吸する」が対策方法になります。
②登山行程
UIAA(国際山岳連盟)は、高山病にならないための登り方として、「高度2500〜3000m以上のところでは、1日の高度上昇は約300〜500mにした方がよい」と提示しています。
富士登山に例えると、5合目が約2500mなので、本来はそこで1泊し、翌日は2800mの山小屋で宿泊することが望ましいということなのです。そういう登り方はあまりしませんが、それくらい気をつけて高度を上げないと、高山病は発症しやすいのです。
実際に、添付の図は3種類の登山とSpO2(体内の酸欠度合いを表す指標:動脈血酸素飽和度)を表していますが、これを見るとヒマラヤの5000mのトレッキングよりもキリマンジャロ登山は厳しく、さらに富士登山はもっときついということがわかります。
Hatsumi Kosone Ishigami 様の今までの高所登山の様子から、「バスや電車ではなく歩いて移動したのちに宿泊する」「1日の高度上昇量が600m以上で、そこで宿泊する」場合に高山病を発症している可能性が考えられます。そのため、宿泊地よりももう少し低い高度で1泊増やす、などで対応するとよいかと思います。
しかし、登山行程は自分で計画することが可能な場合もありますが、ツアーなどの場合は行程を変更することができないこともあります。その際は目的とする登山に出発する前に、少し低い山で睡眠をとっておく、低酸素トレーニングで睡眠を行う、などで対応したらよいかと思います。
高山病に関する問題は個人差がとても大きく、体調や登山行程によっても左右されます。
昨年は大丈夫だったのに今年はダメだった・・・ということもよくあります。
高山病を劇的に改善する薬や対策方法は、残念ながらありません。
酸素が少ない高所にうまく適応させながら登山を楽しめる方法が見つけられるといいですね。
ご回答をありがとうございます。
富士山は高度順応に難しい山なのですね。
2週間後のキナバル山は、低酸素トレーニングで、来夏の富士山は山頂まで2泊かけて登ってみたいと思います。