会員メニュー

山岳ガイドへの相談

解決済み

登山中の栄養補給について

相談者 ericks さん

登山中に適した栄養補給について教えてください。
水分や、行動食はどんなものを取り入れると効率的に体が動くのでしょうか?
スポーツ飲料と高カロリーをなんとなく意識してチョコを持って登山してます。
明確な知識を教わったことがないので、確証がないままなんとなく登山をしてきました。

 人間の体は栄養の保管庫の役割も持っているので、日頃からバランスの良い食事を心がけ、当日の朝食をしっかりとっていれば、活動に必要な栄養はおおむね体に蓄えることができます。しかし、登山は活動時間が長く、強度の高い運動であるため「エネルギー」「水分」「塩分(特に夏季において)」の3つに関しては、体に蓄えられたものだけでは不足してしまうため、行動中に補給する必要があります。今回は、このなかの「エネルギー」について考えたいと思います。(水分補給の目安につきましては、医師の伊藤先生が回答された過去のQ&A(上手な水分の補給方法)をご確認いただければと思います。)

【何を食べるべきか】
エネルギーを生み出す栄養素は、糖質、脂質、たんぱく質の3つです。
①糖質
糖質中心のものは効率よくエネルギーになります。具体的にはパン、おにぎり、バナナ、チョコレート、ソフトクッキー、甘納豆、ドライフルーツ、柿の種、シリアルバー、エナジーゼリー、スポーツ羊羹などが行動食としてとして好まれています。甘みの強いものは速やかにエネルギーになりやすく、甘さの少ないものはゆっくりエネルギーが持続すると考えていただければよいでしょう。
②脂質
アーモンドなどのナッツ類は脂質を多く含みます。糖質は1グラム当たり4kcalのエネルギー量ですが、脂質は1グラム当たり9kcalものエネルギーを産生するため、同じ重さであれば、より多くのエネルギーを得ることが出来るため、ナッツ類を行動食として好む人も沢山います。糖質に比べて胃の滞在時間が長く、消化に時間がかかります。
③たんぱく質
たんぱく質はエネルギー生成の効率が良くないので、行動食としては、あまり用いられません。あえて行動食としての特徴をあげるなら、食事後の体温の上昇(食事誘発性熱産生)が他の栄養素を摂取した時よりも高いということです。噛むことも体温の上昇につながるので、寒い季節にビーフジャーキーを噛みながら歩くと、わずかながら体が暖かく感じられます。

ericksさんの持っていかれている「チョコレート」は素早くエネルギーになる糖質と、ゆっくり消化される脂質が含まれています。高カロリーで、とても良い選択の一つだと思います。ただ、夏の低山など高温になる環境ではではドロドロに溶けてしまうので、持ち運びに工夫が必要かもしれません。
行動食選びは「これさえ食べておけば良い」というものではなく、いろいろな食品、色々な組み合わせをすることで、素早く補給したり、エネルギーを持続させたり、体を温めたりと、様々な効果が期待できます。もちろん栄養補給できるのであれば飲み物でも大丈夫です。魔法瓶に暖かいココアや、暖かい甘酒(米麹原料のもの)を入れておけば、冬にはうってつけの行動食といえるでしょう。
また、行動食は栄養補給だけでなく、気分転換にも影響します。いつも甘いもの、いつもナッツと決めるのではなく、時には酸っぱいもの、時には塩辛いもの、など味に変化をつけることをお勧めします。ボトルに自分の好きなナッツやドライフルーツ、シリアルを入れて自分オリジナルのトレイルミックスを作るのも面白いと思います。

添付画像のように直接ボトルから食べれば、手袋をしたままでも簡単に食べることが出来ます。

【どのくらい食べるべきか】
登山に必要なエネルギー量は、山のグレーティングや気候、個人の体格や山歩きの熟練度など、様々な要因で大きく変わってくるため、完全な数値を示すことが出来ませんが、そのすべてを行動食で摂取できるわけではありません。運動中は血流が筋肉などに集中するため、消化機能が低下します。食べられる量も個人によって異なりますが、あまり一度に大量の行動食をとってしまうと、かえって調子を崩す結果になるので、食べ過ぎにも注意が必要です。
まずは、当日の朝食をしっかりとったうえで、行動一時間ごとに100~200kcal程度を目安に食べて様子を見てみましょう。(例えば行動時間6時間の山行であれば、600~1200kcal。板チョコレートであれば一枚300kcal程度なので2~4枚を分割して、一時間ごとに食べる感じです。)そののち「経験」によって行動食の量を増減していけばよいと思います。

エネルギー不足(おもに糖質不足)は、シャリバテを引き起こすだけでなく、脳の働きにも影響が表れます。判断力が低下し、転倒や滑落、道迷いなど重大な事故・遭難につながることもあります。こういった事態を防ぐためにも、行動食を正しく選び、安全な登山を心がけてください。

解決 相談者 ericks さん

芳須ガイド、具体的な方法まで併せて教えて頂き有難いです。
行動食といえば、糖質イメージしかなく、なんとなしにチョコを選んでたくらいでしたが、糖質以外に脂質に淡白質に摂取量と自分だけでは考えに及ばなかったことばかり。
大変勉強になりましたし、長い距離の山にも行きたいと目標を持った矢先でしたのでモチベーションも上がりましたっ!

シェア
Sherpaをフォローしよう!

みんなのQ&Aや登山に関する記事をお送りします